マ  ツ





マツ:松 (Pine) は、広範囲に分布する針葉樹のマ ツ科の属の一つ。花言葉は「不老長寿 」「勇敢」「同情」「永遠の若さ」  

厳島神社の能舞台の前でたちどまる。「舞台 の背景の植物はなんでしょう?」とお客様に尋ねる。竹はすぐわかる。「もう一種は? こちらはちょっと抽象化されていま すね?」モミ、トウヒ、イトスギなどの答えが返ってくる。正解に非常に近いのだが、私たち日本人には松に対する特別なも のがあるから、答えは松でなければならない。

 

松は、建築・土木用材や防風林として、 また美観・景観面に大いに利用され、詩歌、絵画、伝説等々にも多く扱われている。老樹名木も多く、神格化されたもの もある。めでたい場には、何らかの形で松がある。

 

ところで世界にはマツ属に属するものは 百種近くある。だから松の話になると、お客様からどんな種類の松かときかれる。モミやトウヒもマツ属に入っている。 松の実として種子を食べるチョウセンゴヨウ、パルプの原料にするエゾマツ・トドマツも入っている。しかし私たちに とって松といえば普通、アカマツとクロマツのことである。そして、時にはゴヨウマツも仲間に入れる。ゴヨウマツはそ の名の通り五葉の、そしてアカマツ・クロマツは二葉の松である。

 

門松、盆栽、水墨画、マツタケなど、松 に関する話をどこかですでに耳にした人には能舞台の鏡板に描かれた木は簡単に松とわかるらしい。いずれにしても松 は、私たちの生活文化にもっとも溶け込んで親しまれた木といえるだろう。

 

“And then, just as they came to the Six Pine Trees, Pooh looked round to see that nobody else was listening, and said in a very solemn voice...” (A.A.Milne’s WINNIE-THE-POOH)

 


(文・恵南一子)