クスノキ(樟)
   
~ 広島市の木~





(樟、楠、Cinnamomum camphora) とは、ク スノキ科ニッ ケイ属の常緑高木である。
花言葉は芳香。


 モミジが 色づく頃、クスノキの実も 緑から黒く変わり始める。秋が深まると大きな木の下には一面に実が落ちる。踏むとプツプツつぶれる。つぶれるといい香りがする。葉も枝も傷つけると芳香を 放つ。常緑広葉樹で、冬は暗い深緑一色だが、新芽の萌える頃は薄黄緑から深緑 まで様々な色合いの緑に緋色や紅色の葉までまざってにぎやかになる。5月には花も咲くが目立たない。樟脳の木で腐れ にくく虫がつきにくい。古くから仏像や舟を作るのに使われた。家具材、社寺建築材等用途は多い。

 

ところで宮島には1992年にできた「宮島千年委員会」 というものがあるという。厳島神社の大鳥居や社殿などの建て替えに必要な材料となる材木を育てようという会だ。大鳥居に は、太くて直立した幹の部分が、少なくとも長さ16mはあるクス ノキが二本いる。現 在の大鳥居は宮崎と香川から運んだという。クスノキの巨樹は多いが天然記念物に指定されていたり御神体だったりして 伐採できない。

 

また二股になっていたり横にのびていたりして柱には 不向きなものも多い。そんな話を すると、お客様から「東南アジアから買うんだね」 「是非ケニヤから買いなさい」などが返ってくる。またオーストラリアの東南部ブリズペンやシドニーあたりでは「クスノキはどこにでもはえる困りもの。大き くなるとほかのものが育たないから見つけしだい小さいうちに抜く」のだそう だ。気付いてみれば、なんと私も庭にはえてくるクスノキをつぎつぎと抜いているではないか!

 

発芽は至極簡単だが、まっすぐな天をつく大樹に育て るには何世代にもわたる根強い努 力と木への深い慈しみが必要だろう。そして何よりもそれにふさわしい自然環境を守っていきたいものだ。

  (文・恵南一 子)