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ニューヨークマンハッタン151通り.ニューヨークの地図に通じている人であれば,そこがどんな地区かすぐに推測できたでしょうに.
2年前,広島・岡山を2日ガイドしたジョーク好きの大柄な黒人男性ロバートさん.退役軍人.歯科医.「マンハッタンに親の遺してくれたビルが5つあるからね.ニューヨークに来るときは連絡して.」と手渡されたカード.すっかり真に受けた私はプエルトリコからの帰路,日本への直行便がないのを口実にニューヨークでの乗り継ぎを決めてしまった.
何のためらいもなく,自宅を宿として提供して下さったお誘いを受け,空港までの出迎えを深謝しつつ,彼の家が近づいてくる.そこは,なんとハーレムのど真ん中.ハーレムツアーのバスがよく停まっているよ.仕事柄,様々な人種,国籍の方とお会いし,肌の色や出身地で分け隔てはしないできたつもりだが,まさかハーレムを3泊の宿にするとは.私たちの思いがけなさが顔に出ていたのか.「こんなに黒人ばかりの地域に来たことはないよね.」と言った彼の横顔に陰りを見たのは思い過ごしだったのでしょうか. 
わずか2日しか滞在しない私たちのために手段と情報を駆使して,効率よく観光できるよう旅程を作って下さり,おかげで主な観光箇所へはほとんど訪れることができた.中でも圧巻だったのはエンパイヤステートビルからの眺望.2時間も待った末に眼下にできた摩天楼の
美しさ.初秋の爽やかな風とともに心に残った.なんとマンハッタン生まれで今年60歳になる生粋のニューヨーカーの彼はこの頂上に立ったのは初めて!お上り観光客しか来ない場所のようだ.「君たちが来てくれなければ,ここに上ることなんてなかったよ.私を連れてきてくれて有り難う.」奇妙な御礼に「どういたしまして.」と答えながら,大笑い.
ブロードウェイのミュージカル.彼の自宅から徒歩で行ったNYヤンキーズ球場で松井選手を見たこと.どこも彼が一緒で,大船に乗った気で旅できたことは本当に有り難かった.しかし,野球観戦の帰路,穏やかな彼が,NYヤンキーズが黒人選手を初めて優遇したことを語ったときの熱っぽい語調に,私たちの窺い知ることのできない彼の側面を感じた.彼が若かったであろう30年,40年前の黒人問題に思いを巡らせると複雑な気持ちだった.
一夜明けた翌日,「ハーレムもいいでしょ.好きになってくれたみたいだね」.そう言われた私たちは何故か,くつろいだ気分になっていた.もてなしの心を持つ人の家はどこも暖かく,旅人をリラックスさせる.私が見たマンハッタンは,気取りのないロバートさんの住む,人の息吹の感じられる素敵な街だった.