お客様との再会

プエルトリコにて

一年に数度2,3週間の休暇をとって家族でクルーズの旅を楽しむバルザック夫婦が,私達の今夏プエルトリコ滞在中つきっきりで案内役をかってくださるというのだから,月並みな旅で終わるわけがあるまい. まして,初めてクルーズをする我々のために同行して戸惑うことのないようアテンドしてくださるというのだから.
今回の旅のハイライトは,一週間のカリブ海クルーズ.1300名あまりの乗客を乗せ,米・英.仏・蘭それぞれ元の統治国の影響で歴史も文化の異なるカリブ海上の4つの島に寄港しながら,コバルトブルーの海を航行していく.
 カーニバル社のデスティニー号は10万トン,全長270メートル.まさに動くホテル
船内では,毎日,キャビンに翌日の船内でのイベント(ミュージカル,コンサート,ディスコ,ダンス教室,オークション,最終日にはご親切にスリムアップのためのクラスまで)や,寄港先でツアーやショッピングの案内が届けられ,明日は何をしようか,つい目一杯の予定を立ててしまい,夕方のディナータイムにはうたた寝してしまうほど.船内での催しは原則的に全てクルーズ料金に含まれているというのだから,欲張ってしまう.甲板ではジャグジーやプールがあり,気ままに日光浴する人.プールサイドのバンドに合わせて踊る人.日がな一日読書する人...
クルーズ客にとってのお目当ての1つは食事とか.500名強の乗客がフルコースで食事をとることのできるメインダイニングが二つ,24時間いつでも軽食の取れるビュッフェスタイルのレストラン.いつでもどこかで何かが食べられるように配慮されており,これだけ大勢の乗客なのに,ほとんど待つことがない.また,日替わりで,和食の日.インド料理の日,中華の日まであるというバラエティ.おみそ汁のわかめがひじきであったり,カッパ巻きのキュウリが青ネギであったりと笑えるようなアレンジがかえって楽しい.シェフはフィリピン人と聞いて納得.こうした大雑把さがより多くの客に安価に楽しんでもらうためには必要なのかもしれない.自己満足の完璧さを追い求めるあまり,妥当な値段でサービスを提供できず,おおらかさを欠きがちな日本人は少し見習ってもよいかもしれない.それは食事のみならず,クルーズの随所で感じられることであった.
フォーマルウェアーでのディナーは,毎日が大人の七五三.昼間はショートパンツにタンクトップだったのに,夜にはタキシードやイブニングドレスで変身し,ダイニングルームへと向かう.初日は緊張し,気重たっだ我々も,段々とはまってしまい,気分だけは淑女,紳士になれるのだから不思議
寄港先の島では,降り立つや,ショッピングセンター,各種マリンスポーツ,レンタカー等の業者が待ち受け,どんな通貨もOK.免税扱い.観光が主要な財源であるこの地域の商魂の逞しさを感じながらも,限られた停泊時間を有効に過ごしたい客にとってはこんなに有り難いことはない.一週間もの海の上での生活なんてさぞ退屈であろうという懸念はうれしい杞憂で終わった. 
今年70歳になられるバルザック氏の再三のお誘いに,もうお断りする理由も尽きてしまって出かけた地球の裏側のプエルトリコ.熱帯の自然もスペイン統治時代の史跡も興味深いものだったが,最も思い出深いのは私たちを十二分に楽しませようという彼の気配りだった.2週間も同行してくれ,彼も疲れていたのに,我々の気持ちを引き立てようと,毎日,満面の笑みで出迎え,中2にもなる息子を軽々と抱き上げてくれたこと.到着の日には私たちが気恥ずかしくなるほど,辺り構わず大声で歓迎してくれたのに,お別れの日には寡黙にドライブし,またいつか.とだけ言って別れたこと.
「あなた達が楽しめること,それが私の喜び.」と心から一緒に楽しんでくれたこと.他人の楽しみを自分の楽しみとして味わえる大きな心をずっと感じていられたこと.その熱い思い出はいつまでも色あせない.
 (カーニバル社のURLは http://www.carnival.com です.)