旧暦

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日本では明治6年の改暦以来、太陽暦であるグレオリオ暦が使われています。しかし、今でも時々、季節の変わり目などに、それ以前の古い暦が顔を出すことがあります。この古い暦=旧暦とは一体どういうものなのでしょうか?
旧暦とは?

  今日旧暦と呼ばれているのは、具体的には明治の改暦前まで使われていた天保暦を修正したものです。天保暦は太陰暦と太陽暦をミックスした太陰太陽暦という暦です。1朔望月はおよそ29.5日、それが12か月集まった太陰暦の一年は354日となります。太陽年とは11日も違いますね。太陰暦であるイスラム暦のラマダーンの月が毎年どんどんずれている(ようにみえる)ことを思い出してください。砂漠の国ではあまり困らなかったのかもしれませんが、四季があって農業を行なう地域ではこれでは困ります。そこで太陰暦に閏月(うるうづき)を挿入して太陽暦に合わせたのが太陰太陽暦です。中国では2〜3年毎に1か月の閏月を挿入する方式が採られ、また、太陰暦ではずれてしまう季節を表わすために、太陽年を24分割した「二十四節気」、さらにそれを3分割した「七十二候」というものが考え出されました。日本では中国暦をはじめはそのまま、後には修正して使ってきました。旧暦の中には、その他に「五節句」や「雑節」そして陰陽五行説に由来する吉凶禍福・禁忌など様々な情報が盛り込まれています。

旧暦を楽しもう!

 白い鬚のおじいさんが辻々に立ち、ニコニコ笑いながら手招きをしている。近づくとぼそぼそ口を動かして何やら話しかけてくる。「春風が氷をとかしているぞ」「セキレイの声を聞いたかね?」「すずめが海に入ってハマグリになったよ!」えっ?なんですって?「ほら、冬ごもりの虫たちが土の中から出てくる!」「夏が来たぞーう!!」こっちのおじいさんたちはちょっと声が大きい…。これが「七十二候」と「二十四節気」、旧暦の季節のお知らせです。おじいさんたちの声に耳を傾けて、自然の変化と季節のうつろいを知るだけでなく、昔々の日本や中国の生活に思いを馳せるのも楽しいですね。
   さて、旧暦の日付は月齢です。月を見れば日付がわかり日付を見れば月齢がわかります…三日月が見えたらその日は3日、15日に空を仰げばまーるいお月様が見えるはず。では、月食はいつ見えますか?月食は、太陽―地球―月が一直線に並んだときに月が地球の影の中に入ってしまう現象です。影に入らなければ満月、影に入れば月食で、日付は同じ15日頃。日食はその逆(太陽−月−地球の並び)で、朔日(ついたち)です。 
   旧暦で毎年○月○日にお祭りがあるとしましょう。その日はいつも同じ月が見えます。盆踊りはいつも満月の下。では「星祭り」とも呼ばれる「七夕」は?。七夕の夜は必ず七日月=上弦の弓張り月でした。上弦の月は天を渡る小舟のようにも見えましょうし、夜半には沈んで星の光が冴え渡ります。まさに星々のデート日和だったんですね(!?)。
カレンダーの片隅にちいさく書かれた旧暦の月日。そこには驚くほど豊かな自然と生活の記憶が隠されています。じっくり見てみるととてもおもしろいですよ。え?時間がない?…暦は変わっても時間の長さは変わらないはずなのに、おかしいですね!?
暦の参考書籍:
「現代こよみ読み解き事典」岡田芳朗・阿久根末忠 編著(柏書房)
「暦のからくり」岡田芳朗 著(はまの出版)
「暦の見方つかい方」 松田邦夫 著(泰光堂)
「暦」秋月さやか・文/岡本洋典・写真(青青社)
「新こよみ便利帳」暦計算研究会 編(恒星社)
「暦の歴史」ジャクリーヌ・ド・ブルゴワン著(創元社)