『殿様の通信簿』  

 磯田道史
 
朝日新聞社

2003年のベストセラー『武士の家計簿』の著者による作品です。『家計簿』の方は、途中でギブアップしたままですが、『通信簿』はすぐ読めました。公儀の隠密が探索してきた諸大名の内情を幕府の高官がまとめたと思われる、まさに『殿様の通信簿』たる書物が、江戸時代元禄期に編纂されており、本書はその解読書といったところ。岡山後楽園を造った池田綱政や、加賀百万石初代前田利家、三代前田利常、利常の正室珠姫など、話のねたになりそうな人物満載です。

池田綱政など、『通信簿』ではバカ殿の極みのようにかかれています。70人も子どもがいたということで、「あまつさえ、女色を好むこと、倫を超えたり」と評価され、名君といわれた父親の池田光政が書物を良くする学者であるのに、綱政は世間で「学者の子に、かくのごとき、不学・文盲・短才も、めずらし」とうわさされているなどと、ばっさり切られています。しかし、そこに著者による分析が加わり、父子の確執や、風雅を好み仁愛・慈悲を信条とする綱政の人となりが描出され、生身の綱政を感じることができます。

前田家とその藩主についても、ネット上の観光情報サイトでは得られない生々しくも興味深い情報が得られます。「蛇責め」が何なのかを知りたければ、本書を読みましょう。徳川との関係も出てくるので、徳川幕府の一面を理解するのにも役立ちます。

その他に、徳川光圀、浅野内匠頭と大石内蔵助、内藤家長、本多作左衛門が取り上げられています。

ご参考に!

中井泰子

戻る